教養文化養成事業の講演会が開催されました

2012-12-13

  12月月6日(木)に大月短期大学後援会による「教養文化養成事業」が開催されました。

  本事業の目的は、様々な分野で活躍される方たちの話を聴くことで、学生にとってより広い視点からの物の見方、考え方を学ぶ点にあります。今年度は「日本における音楽産業の歴史~日本で最初(明治43年)に音楽産業に参入した日本コロムビア株式会社の社史をベースに話を進める~」というテーマに沿って、株式会社コロムビア興産 元代表取締役社長 宮川和男氏と日本コロムビア株式会社 元レコード製造部技師長 桝田勝氏のお二人に講演をお願いしました。

  会場となったC201教室は早い時間から満席となり、学生に加えて数人の市民の方が参加してくださいました。最初に宮川氏から、日本のレコード制作会社と製造会社の現状について説明がありました。それに続いて、もっとも初期のアナログ音源をパッケージ化したSPレコードや、その後のLPレコードなどに進化する様子がわかりやすく示されました。

  レコードの発明により、多くの人が音楽を楽しめるようになりました。太平洋戦争の時には多くのレコードが戦地に送られ、兵士たちに大きな喜びをもたらしました。また、それらのレコードが日本に逆輸入され、ヒットしたケースもあるとのことでした。そして戦後の暗い時代のなか、深みのある音楽がパッケージ化されたレコードは、日本人の心に大きな勇気を与えました。

  ところどころで、古い音源を収録したCDを聴きながら話が進められました。宮川氏の感慨深い表情からも、当時の音楽の卓越した力が伝わってきました。教室にはアナログならではの優しい音が響き渡り、学生たちは真剣な表情で聴き入っていました。また、アナログレコードの美しいジャケットが紹介され、「ジャケットで買う」という音楽の楽しみ方を改めて知ることになりました。

  次にデジタル化の時代への考察がなされました。1982年にはCDが発売されました。技術革新により、まったく新しいパッケージが登場したのですが、これによって音楽ソフトの幅はより広がったといえます。しかし、アナログが完全にデジタルに移行したわけではありません。音楽配信を含めたデジタル音源への需要が高まる現在にあっても、アナログレコードは一定量生産され続けています。

  講演の後半は、桝田氏から技術の領域についてのお話がありました。「ちょうど今日12月6日は音の日です」。1877年、エジソン自身が発明した蓄音機で音の録音と再生に成功した日とのことです。このような日に音楽産業の歴史を知る機会が持てたのは、偶然とはいえ深い意味がありそうです。

  桝田氏は、CD誕生の経緯とその基本的な構造、CD再生の仕組みを丁寧に解説してくださいました。また、CDの製造工程の全体像が示され、そのなかで「ガラスマスター」から金属原盤をどのように作るかの説明がありました。金属原盤作製の工程では、「メタルマスター」「メタルマザー」さらに「スタンパー」が作られ、このスタンパーを使ってCD(ディスク)の成形が行われていきます。こうしてスタンパーを多数複製し、一時に均一のディスクを大量生産していく仕組みです。ものづくりの現場でみられる崇高な叡智を感じます。

  さらに、CDを再生する光ピックアップの構造などに関しても説明がありました。これら一連の技術の話は高度な内容でしたが、学生は熱心に話の筋を追うよう努力しているようでした。

  最後に学生自治会の役員(2人の男子学生)が宮川氏と桝田氏に花束を贈呈し、講演は盛況のうちに終了となりました。学生の感想文をみても関心の高さが伺え、教養文化養成事業の目的にふさわしい内容であったと思います。なお、希望者を対象として実施した第2部は、昔の音源に触れるための時間としました。こちらも数名の学生が参加し、和やかな雰囲気のなか音楽を堪能しました。

  講師のお二人を含め、本事業の実施に協力してくださった皆様に感謝いたします。

〔文責・上笹(学生委員)〕